SPECIAL TALK スペシャル対談

これからのアパレル業界と目指す未来

対談企業紹介

COMPANY

クロスプラス株式会社
1953年(昭和28年)設立。
婦人アパレルメーカーとして、量販店、百貨店、専門店など幅広い販路を持ち、量販店レディースアパレル売上全国1位、レディースアパレル売上全国3位(2017年繊研新聞調べ)。オリジナルブランドをはじめ、「エドウィン」「スパイラルガール」「デュラス」など複数のライセンスブランドを展開している。
https://www.crossplus.co.jp/

PROFILE

代表取締役 山本大寛
1977年生まれ。福岡県出身。
東京大学大学院を卒業後、新日本製鐵を経て、2008年クロスプラスに入社。
経営企画室にて情報システム、EC事業開発、マーケティング室担当を歴任し、2014年より代表取締役社長に就任。

SESSION 01 クロスプラス(株)
代表取締役 山本大寛さんに聞く

池田:
本日はお忙しい中ありがとございます。対談第一弾は、30年来お取引先で婦人アパレルのトップを走るクロスプラスさんにお願いできればと思っていました。実現でき嬉しいです。山本社長は、以前鉄鋼メーカーにお勤めだったと聞きましたが?
山本(敬称略):
はい。理系の大学、大学院を卒業後、全く畑違いの会社で生産技術の仕事をしていました。縁があって2008年にクロスプラスに入社しました。
池田:
私も理系の大学出で、浜松の木工加工機械の製造制作部門にいました。先代社長から声を掛けられ、全く知らない業界に飛び込んだ形です。社長に就任したのが2014年、自分で4代目になります。
山本:
私も2014年から社長就任で4代目です。共通点が多いですね。笑
池田:
本当ですね。クロスプラスさんとは、櫻屋商事の時代からお世話になっていて、イケダヤ婦人服の品揃えの中では中心的存在です。アパレルメーカーの中でトップを走り続ける秘密はどこにあるのでしょうか?
山本:
お陰さまで、婦人服業界の数量ではトップです。一番の強みは総合力。ひとつは、ヤング、ミセス、シルバー層と年齢軸をフルカバーしていること。各年代で商品開発と販売を行っています。
もうひとつは、社員の力、会社の仕組み、風土・企業文化を含めた会社全体の総合力です。社員の力は、まずよく動くこと。営業は、とにかく足を運びよく喋ります。デザイナーは国内海外走り回って色んな情報を集め、売れ筋になるファッションを作ります。仕組みでは、物流やシステム、品質管理、営業をサポートする体制、仕組みが整っています。企業文化としては、アパレル業界はお洒落で自由と言った雰囲気がありますが、クロスプラスの社員はとにかく真面目。名古屋文化的に少しケチな部分も含め、ムダなものは使わずに、自分の仕事を真摯にこなします。この3つがクロスプラスの総合力です。
池田:
その3つ、イケダヤの感覚にとても似ています。バイヤー、営業の魅力は足で稼ぐフットワーク。仕組みはまだまだですが、最近物流面での仕組みも整い始めています。バイヤーと店舗、店舗同志のコミュニケーションにITを活用する動きもあります。風土面では、イケダヤの頭文字のI(アイ)愛が根本にあって、お客様に対しても社員に対しても、地域の人達にも愛を持って接していく、それがイケダヤだと考えています。

SESSION 02 「作ることを究める」消費者に選ばれるために。

池田:
先日繊研新聞のインタビュー記事を拝見しました。アパレル業界の厳しい状況が続く中、これからのビジネスモデルについて、どうお考えですか?
山本:
一番力を入れなければいけないのは、作るという部分で強みを持つことです。当社の場合、お客様は対消費者と言うよりも小売店のバイヤーさんですが、先々の消費者を見据えたモノづくりが重要と考えています。デザイナーや企画担当者が世界中の情報を集め常に変化するファッションを如何に取り入れるか、生産プロセスでは中国主体で作っているものを東南アジアなどへの生産拠点の移転も含め、お客様にとってお値ごろなものをどうやって届けるかが私たちの使命です。
販売の形は、百貨店から始まりGMS(総合スーパー)、専門店やショッピングモール、webと常に変化します。変わらないのは消費者が選ぶということ。私たちは消費者に選ばれるいいものを作る。「作ることを究める」ことが会社の根本です。
池田:
「作ることを究める」ことで消費者に選ばれるということですね。
クロスプラスさんは、婦人服を中心に幅広く提供しています。これは私ども小売りの悩みなのですが、総合衣料はお客様から何でもある店に見えます。10~20年前はそれで良かったですが、今は少し感性が違うと「ここは私の店じゃない」と見られてしまいます。山本社長は、「今年の目標は尖る」と記事に出ていましたが、それはイケダヤも課題とするところです。「尖る」とは、どのようなイメージですか?
山本:
ファッション業界全体のトレンドを考えると今は成長期ではありません。その中で消費者に選ばれるためには、お客様から見て「これはいいな」と思うものを作り、「これ欲しい」と思う伝え方をする必要があります。尖るというのは、そこで選ばれるための商品力、伝え方を磨くことです。
今思うのは、ファッションという大きな器の中で、服が選ばれているのか?ということ。スマホケースもファッションだし、大きな捉え方をすればアウトドアに行く事自体もファッション。その中で服が選ばれるということを私達はやらなければいけない。そして服の中でクロスプラスのボトムやニットが選ばれるためには、商品力を磨かないといけません。そのためには、今の時代にマッチしたキーワードに合うモノづくりが必要です。例えば洗濯機で洗える、シワにならないというキーワード。今までアパレルメーカーは、色とか柄とかを提案していれば良かった。これからはお洒落とかカッコいいだけでなく、機能や生活シーンに合わせた提案が求められます。
池田:
そうですね。モノとしてお店に置くだけではお客様に価値が伝わらないことを最近感じます。どうやってその価値を伝えるか。お客様の生活シーンを思い浮かべ、突っ込んだ提案をすることで、「この店私の事分かってくれている」「この店員さん、いい提案してくれる」に繋がっていくと思います。
イケダヤは服を作るわけではありません。例えば、クロスプラスさんが作った服の誕生ストーリーをバイヤーから店舗スタッフに伝え、「こんなシーンで使ってもらったら幸せだよね」と消費者に届けることが大事だと思います。
もう価格だけでお客様は満足してくれません。今はそれに加えて、価値を伝えることに取り組んでいるところです。
アマゾンや楽天などECがお客様の利便性を追求し、実際に自分で使ってみて便利だなと思います。ZOZOスーツも体験し、正直あの技術には驚きました。
山本:
私もやりました。技術に興味があって、どういう未来があるのかなと思いまして。Tシャツを注文しましたが、測る技術と製造の技術はやはり違うなと感じました。フィット感という意味では製造の部分でまだまだ乖離があります。ただ方向性としては、カスタマイズと言う流れはあると思います。
池田:
そうですね。私はTシャツとGパンを注文しましたが、思ったよりもピッタリ感はありませんでした。でも、あの測る技術と注文への流れは凄いと思います。未来はこういう方向に向かうのだろうなと感じました。

SESSION 03 デジタル技術の活用、ECサイト、雑貨・・・
変化し続けることが大切。

池田:
クロスプラスさんの考えるECも含めた今後の未来像はどのようなものですか?
山本:
まず取り組んでいるものとして、デジタル技術の活用があります。私たちは機動力を発揮するために、1チーム20人程度で、企画生産から販売まで一気通貫でやっています。それがスピード力、意思決定の強みでもありますが、その精度を高めるためにデジタル技術の導入を進めています。コミュニケーションアプリとか、将来的にはサンプルもデジタルでOKになるかもしれません。
もうひとつはeコマース。実際にネットで購入する人たちがいる以上、eコマースの知識を私たちも持たなければ、そこで何が起こっているかわかりません。どういう広告、どういう見せ方、どういう商品がいいのか、実在する商品とeコマースの商品とでは、多少伝え方が違うことも体感しています。モノを作ってからそれをどうお客様に伝えていくか、それに向き合うために、自分たちでeコマースをやっています。顧客ニーズを取り込むための手段としても必要と考えています。
池田:
イケダヤも今年からリサーチや試験的な意味も含めECに参入しました。今はスマホ中心で、折込チラシもなかなか届かない時代です。販促の意味でもデジタルは無視できません。商品の存在をお客様に届けるツールとしてLINE@やFBを活用しています。どう伝えるかは経営上の最重要課題です。
最近、帽子や雑貨も始められたそうですが?
全国からバイヤーが集まるクロスプラスの展示会。
3フロアに、オリジナルブランドからライセンスブランドまでがズラリと並ぶ。
山本:
はい。今回の展示会では帽子メーカーの展示をしています。雑貨も始めました。今までは婦人服中心でしたが、コーディネートする上で雑貨は必需品です。ニット素材の服は作るけどマフラーは作りませんとか、ニットの手袋を作らないのはどうなのか、それは本当の意味での顧客対応ができていない、というのがスタートでした。商品の構成を顧客側に広げたわけです。
私たちの強みは、メーカーによくあるミセスだけとかヤングミセスのみといった偏りがないところです。バイヤーさんが見に来た時に、「こういうものもあるんだ」と知っていただき選ばれるようになりたいと思います。
池田:
トップメーカーのクロスプラスさんが提案してくれる服飾、雑貨を、同じ展示会場で見て触れてトータルでイメージできるのはバイヤーにとって嬉しいですね。服飾&雑貨という組合せはイケダヤでも重視しているポイントです。
当社も今までは縦割りの仕入れで、婦人服の中でもミセス担当、ヤング担当、トップスとボトムと分かれていました。山本社長がおっしゃるように一人のお客様からしたら区別がないし、私のお気に入りのボトム、トップス、マフラーを同時に見るのが自然の流れです。今後もイケダヤの店づくりに、クロスプラスさんの商品は欠かせない存在です。
最後に、山本社長の好きな言葉またはモットーを教えてください。
山本:
今、社長として一番意識しているのは、変化し続けるということです。そして「すぐやる」ということ。業界の環境、顧客ニーズは常に変化しています。私が鉄鋼メーカーからアパレルに来た時に最も感じたことですが、鉄鋼では何か一つ完成すれば数年は食べていけますが、アパレルは波もあり時代の変化を常に先取りしないとダメです。社長になって1年ほどした時、それをすぐやらなければいけないと思うようになりました。色んな問題が日々出てくる中、放置しておいてそれで済むものもありますが、まずはやってみることが大事。間違っていることもあるかもしれませんが、そういう時はすぐに戻せばいいんです。
池田:
今イケダヤが目指しているのも同じです。社内ではアジャイルと言っていますが、挑戦してまずは試してみる、一歩踏み出すと見えてくるものがあります。ダメだったら止めればいい。良かったら水平展開して行こうと。
本日は、参考になる話、共感できるお話を本当にありがとうございました。
山本:
こちらこそありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。